日本海を見下ろす山の中腹に建つ住宅である。敷地には5m程度の高低差があり近代的な手法を用いると擁壁を建て平に造成した場所に住宅を建てることが容易に想像できた。
ところが敷地を訪れその雄大なポテンシャルを目の当たりにすることになる。そしてこの傾いた大地を可能な限り保存しその地べたに座り季節毎に移ろい行く様々な日本海を眺めるようなそんな場所をつくりたいと思った。
しかし傾いた場所でそのまま生活するのは難儀であろう。そこでまず行為毎の小さなまとまりをつくり、大地をなるべく保存するためにそれを等高線に沿うように分散配置した。そして次にそれを傾斜したトンネルで繋ぐこととした。
上述した操作は造成費用を削減することにも繋がることからトンネルは行為毎の空間を繋げる装置として機能するだけではなく自然環境の保存と経済合理性の架橋でもあると言えるのではないだろうか。
敷地の最上部に配置した駐車場棟は車の保管場所と併せて屋根のある開放的な半屋外空間としても機能する。風が通り抜ける半屋外空間は来訪者との快適で心地良い時間をつくることになるであろう。
またその下部に配置された寝室棟には玄関としての土間を実装させそれをゲストルームと主寝室の緩衝帯とした。それはそのまま通り土間となりそれぞれの棟を繋ぐ下降空間となり和室棟を経由しながら最下部にあるリビング棟へと繋がるのである。
そしてこのリビングには家族が集まり日本海を含む様々な風景を臨みながら穏やかで快適な生活を営むのである。
家は自然環境と住まい手を切り離すものではあるが、この様に敷地の高低差や眺望などと緩やかに接続させ、日常生活に於いてもこのトンネルを上り下りしながらカラダ全体を使ってこの家に住むことでここにしか無い唯一無二の環境が出来上がる様に思う。
この山の様々な場所に座って、目前に広がる日本海を見ながら豊かに生活して欲しい。
監修者:H.A.S.Market / 長谷部勉
施工者:岩見建設有限会社 / 渡辺真也
用途:専用住宅
所在地:島根県浜田市
主要用途:住宅
主体構造:木造
敷地面積:875.13㎡(約264.72坪)
延床面積:183.83㎡ (約55.60坪)
竣工:2023年
プロデュース:R+house
写真:@Takuya yamauchi photography
Supervision:Tsautomu Hasebe / H.A.S.Market
Constructere:Sinya Watanabe / Iwamikensetsu
Program:Privare house
Location:Hamada-shi,Shimane Prefecture,Japan
Structuran System:Wood construction
Site Area:875.13 sqm
Total Floor Area:183.83 sqm
Construction Preriod:2023
Produce:R+house
Photo:@Takuya yamauchi photography