嘗ては生業や社会交流の場でもあった住宅は、やがて職住分離といった都
市構造の変化に応じて、敷地の内側に閉じ、住むための機能だけに特化さ
れていった。
しかし、現代においては、情報技術の進化とパンデミックにより、上述した
都市構造は急激に変わろうとしている様に思う。
本計画は近代化により純化された住宅に、再び嘗ての複雑性を持たせ、そ
れを現代的に解釈することで、新しい豊な暮らしを創出しようといった試み
である。
敷地は地方小都市の中心地にあり、辺りには主に住宅が建ち並ぶが、田畑
も混在する住み易そうな場所であった。整形のそれには前面道路以外の三
方に隣家が現存していたことから、それらとの関係性を調停し住む為の環
境を整えるとともに、生業の場を社会とどの様に接続させるかを考えること
から計画をスタートさせた。
また、嘗ての形式を復権させるとは言ったが、ただそれにとどまることなく、
生活スタイルの異なる現代人にあわせて、プライバシーへの配慮も考慮す
ることとした。そこで、社会と接続する道路側から敷地の奥に向かい、プライ
バシーの濃度を高めたグラデーショナルな計画を目指した。
具体的には、前面道路側である北側の外壁は全面的に板張とし、住まい手
と来訪者は隣家との隙間に設けられた路地の様なアプローチからこの家
にアクセスする。
いわゆる住宅の外壁と異なる板張りの外壁は、街(=社会)と緩やかに馴染
み、同時に街に作用する仕掛けとなるのである。また、路地の様なアプロー
チは住居部分と店舗部分を隔てる壁に沿う様にクランクしながら、住まい
手と来訪者を向かい入れることで、店舗部分を道路側に向け野放図に開放
するといったものとは一線を画し、隠れ家に訪れた時の様な期待感を持た
せることになる。
敷地内部の外(=庭)と敷地外部の外(=街)との関係性を丁寧に解くことで、
敷地の内部に閉じた近代的な家から脱却し、この家ならではの外部と内部
の関係性を創出することが、住まい手に豊かさを付与することになると信
じている。
監修者:H.A.S.Market / 長谷部勉
施工者:岩見建設有限会社 / 岩見基史
用途:専用住宅
所在地:島根県益田市
主要用途:住宅
主体構造:木造
敷地面積:239.17㎡(約72.34坪)
延床面積:101.02㎡ (約30.55坪)
竣工:2023年
プロデュース:R+house
Supervision:Tsautomu Hasebe / H.A.S.Market
Constructere:Motoshi Iwami / Iwamikensetsu
Program:Privare house
Location:Masuda-shi,Shimane Prefecture,Japan
Structuran System:Wood construction
Site Area:239.17 sqm
Total Floor Area:101.02 sqm
Construction Preriod:2023
Produce:R+house