クルマ好きの夫婦が住む家である。
敷地北側には由布市と大分市を結ぶ、それなりに交通量が多い
県道があったが、敷地はそれより一段低いレベルにあった為、そ
のノイズは然程気にならなかった。
また、東側にはパワースポットとして知られる蓬莱山を臨むこと
ができる生活し易そうな場所であった。
しかし、辺りを見回すと近隣の建物は、敷地に向かい開口部を有
するものが多く、特に南側の隣家は敷地に圧迫感を与えている
様に思えた。
一般的な計画では建物を北側に寄せて配置し、南側に庭をつく
ることになりそうだが、本計画に於いては、上述した理由により、
それとは異なる家と外界の関係性をつくり出す必要がある様に
思えた。
そこでガレージを南側に設け、それを囲うようにLDKを配置する
という方法に行き着いた。
ガレージを車庫としての機能だけに使うのでは無く、生活に必
要な環境を緩やかに獲得するためのバッファー・ゾーン(緩衝帯)
としても機能させようという試みである。
プライバシーに配慮して高い位置に設けた窓から差し込む光は
ガレージを照らし、それを囲うLDKからは何処に居ても大切にし
ているクルマを感じることが出来るといった構成である。
また、ガレージとそこに停まるクルマはこの家に奥性を付与する
役割も担うことになるであろう。
外界には閉じた2つのヴォリュームが寄り添う形態として記憶さ
れることになるが、南側から距離を確保し開放した2階部分や、
西側に設けたリヴィングの窓は、閉じた箱に開放性を促し、住ま
い手に快適な環境を提供する役割も担うのである。